フリーランスとして、個人で仕事を始めると何かと資金が必要になってくると思います。
また、これから起業しようと考えている方にとって資金調達は悩みのタネでもあることでしょう。
まだ駆け出しのフリーランスだとなかなか融資を受けることも難しいことがあるかもしれません。
そんなとき利用したいのが、「エンジェル税制」です。
この制度は、起業家も投資家もお互いメリットがあるものなので、これから起業しようと考えている方も知っておいて損はありません。
今回は、この「エンジェル税制」についてわかりやすく解説していきたいと思います。
Contents
エンジェル税制について
エンジェルって何?
エンジェル税制の「エンジェル」とは、新しい起業家に出資する個人投資家のことを指します。
例えば、「友人が新しくお店を始めたから200万円出資しました」といった場合この出資した方が「エンジェル」という訳です。
こういった出資者のことを「エンジェル投資家」と呼びます。
どんな仕組み?
もともと、アメリカでは税制上のメリットから資産のある人がベンチャー企業を支援していて、起業する方が活発になったということがありました。
日本でも「中小企業創造活動促進法」という、創業や技術開発、事業化を支援する法律が1995年4月に施行されました。
そして、1997年の税制改正によりベンチャー企業の資金調達などの活性化をねらってこの「エンジェル税制」が創設されました。
エンジェル税制とは、ベンチャー企業への投資を促進するためにベンチャー企業へ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇を行う制度です。 エンジェル税制の優遇措置を受けるためには、基準日において企業要件と個人投資家要件をすべてみたす必要があります。
東京都産業労働局 エンジェル税制とは
というように、簡単に説明すると対象の企業に投資をすると税金が戻ってくるという優遇措置のことなのです。
この「エンジェル税制」の優遇措置を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
この要件を満たしていないと優遇されませんので、まずは確認してみましょう。
では、企業側と投資家側でそれぞれみてみましょう。
投資を受けるベンチャー企業の要件は
- 特定の株主グループからの投資の合計が5/6を超えないこと
- 大規模法人グループの所有に属さないこと
- 未上場・未登録の株式会社で、風俗営業等に該当しないこと
- 中小企業であること
- 起業の設立経過年数に応じた要件をみたすこと
エンジェル投資家の要件は
- 金銭の払込により、対象企業の株式を取得していること
- 対象企業が同族会社である場合、所有割合(株式数および議決件数)の大きいものから第3位までの株主(およびその親族や関係会社等)の所有割合を順に加算し、その割合がはじめて50%超になる時における株主に属していないこと
以上になりますが、少しわかりにくいところもありますので、「要件判定シート」にて確認してみるとよいでしょう。
以上の要件に当てはまれば、次に申請の手続きを行います。
事前確認制度について
前項で「エンジェル税制」の優遇措置を受けるための要件を記載しましたが、この要件を満たしているかの確認を受ける制度があります。
それが、「事前確認制度」になります。
確認申請を受ける際には、投資前か投資後かどちらかになります。
こちらの確認が済んでいれば、企業は投資家に対して「エンジェル税制適用企業」であると、説明することができます。
確認を受けた企業は、希望があれば経済産業省および東京都のHPにて企業情報を公表できます。
では、次に企業と投資家のそれぞれの申請から確定申告までの流れをみていきましょう。
申請手続きにおいて
エンジェル税制の申請は、企業の本店所在地の都道府県で行います。
先程の要件を満たしていれば、都道府県が「確認書」を交付します。
そして、企業はこの「確認書」と「付属書類」(企業が作成)をエンジェル投資家に交付します。
個人投資家は、確定申告の際に企業から交付された確認書等の必要書類を添付してエンジェル税制の優遇を受けることができるようになります。
ベンチャー企業が行う手続きについて
企業が投資家から投資を受ける際の流れと( )は必要書類になります。
資金調達(投資を受ける場合)
- 株式発行を決議 (株主総会議事録等)
- 個人投資家から株式の申し込みを受ける(株式申込証)
- 株式の割り当て
- 投資契約の締結(投資契約書)
- 払込期間内または払込期日までに投資家から払込取扱金融機関に払込を受ける(払込があったことを証する書面)
- 登記(履歴事項全部証明書)
エンジェル投資家が行う手続きについて
投資家が企業に対して出資する際の流れと( )は必要書類になります。
- 株式の申し込みを行う(株式申込証)
- 投資契約の締結(投資契約書)
- 払込期間内または払込期日までに取扱金融機関に払込みを行う
エンジェル税制の優遇について
「エンジェル税制」を受けるまでの、手続きなどについて解説してきましたがこの「エンジェル税制」を受ける際にどのように優遇されるのか、投資家の「投資時点」と株式の「売却時点」についてそれぞれ解説していきたいと思います。
投資した時点での優遇について
投資時点の優遇措置として、2つのパターンがあり、どちらかを選ぶことができます。
具体的な例と一緒にみていきましょう。
設立3年未満の企業への投資が対象の場合(優遇措置A)
(対象企業への投資額―2000円)をその年の総所得金額から控除する。
※控除対象となる投資額の上限は、
- 総所得金額×40%
- 1000万円
のいずれか低い方となります。
具体例 1)投資家Aさん
総所得額 800万円 投資額 500万円
投資額の上限は、上記の1、2の低い方になるので、この場合1になります。
総所得額から控除できる金額
800万円×40%-2000円=3,198,000円
3,198,000円が控除の対象金額となります。
具体例2)投資家Bさん
総所得額 1200万円 投資額 300万円
投資額の上限は、上記の1、2の低い方になるので、この場合1になります。
しかし、
1200万円×40%=480万円
となり、こちらでは、投資額を超えているので、投資額から2000円を引いた
300万円-2000円=2,998,000円
2,998,000円が控除の対象金額となります。
設立10年未満の企業への投資が対象(優遇措置B)
対象企業への投資額全額をその年の他の株式譲渡益から控除
※控除対象となる投資額の上限はなし
具体例3)投資家Cさん
総所得額 800万円 投資額 500万円 株式譲渡益 200万円
株式譲渡益から控除できる金額
200万円
具体例4)投資家Dさん
総所得額 1200万円 投資額 300万円 株式譲渡益 350万円
株式譲渡益から控除できる金額
300万円
このように、どちらの優遇措置がお得になるかは投資家の所得額や投資額などに変わってきますので、確定申告の際にはよく考えてから優遇を受けるようにしましょう。
株式を売却し損失が発生した場合に受けられる優遇措置
投資した企業の株式を売却した際に損失が出た場合、その年の他の株式譲渡益と相殺できます。
その年に相殺できなかった損失については翌年以降3年にわたって順次株式譲渡益と相殺することができます。
- 対象企業が上場しないまま、破産、解散等して株式の価値がなくなった場合にも同様に損失を翌年以降3年にわたって繰越しできます。
- 企業へ投資した年に上記の「投資時点での優遇」を受けた場合、その控除対象金額を取得価格から差し引いて売却損失を計算します。
「エンジェル税制」についての企業に対するメリットは?
前項では、投資家に対しての税制優遇措置について解説してきました。
では、投資を受ける企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
「エンジェル税制」を受けるためには、企業は「エンジェル税制適用企業」であることの「確認」を受けることになります。
こちらを受けることにより政府のHPに対象の企業であると公表されるようになります。
そうすることで、国に認められた企業となり投資を受けやすくなります。
今まで、資金調達に苦労していた企業もこの「エンジェル税制」の制度を利用して投資を受けることができれば、事業の拡大など企業にとっての大きな発展にもつながります。
まとめ
このように「エンジェル税制」とは、投資をする投資家にとっても投資を受ける企業にとっても、どちらにもメリットのある政策であります。
資金調達に頭を抱えている企業も、一度この「エンジェル税制」について考えてみてはいがでしょうか。
また、投資家の方は節税にもなるこの制度を利用してみてはどうでしょう。