フリーランス(個人事業主)になると会計管理も自分でやらなければならなくなります。
その中でも1年に1回必ず行うのが、確定申告です。
確定申告は細かくてわかりにくいと思うかもしれませんが、ここではその確定申告について解説していきたいと思います。
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フリーランスの確定申告には「白色申告」と「青色申告」がある
フリーランス(個人事業主)になると会社員とは違い、自分で所得や経費などを帳簿につけて計算をしなければなりません。
そして、フリーランスを本業として行っている場合は、所得が38万円を超える場合は1年に1回確定申告をすることになります。
所得控除の中に「基礎控除」が一律38万円あるため、この金額を超える場合は確定申告をするようになっています。
フリーランスの確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。
この2種類の違いは、簡単に説明すると「白色申告」の方は申告の必要書類が「収支内訳書」と「確定申告書B」となり帳簿などがなくても簡単に書類作成ができること、「青色申告」は必要書類が「所得税青色申告決算書」と「確定申告書B」となり、簿記の知識を必要として細かい帳簿を作成して書類が複雑になりますが税制上の特典があるということです。
「白色申告」と「青色申告」の違いとは?
先ほど、簡単に「白色申告」と「青色申告」の違いを説明しましたが、実際に確定申告を行う際にどのように違ってくるのか、もう少し解説を加えたいと思います。
白色申告の場合
対象となるのは事業所得、不動産所得又は山林所得を生ずべき業務を行う全ての方です。
必要書類は「収支内訳書(2枚)」と「確定申告書B(2枚+添付書類)」となります。
記帳する内容としては、売上などの収入金額、仕入れや経費に関する事項について、取引の年月日、売上先・仕入先その他の相手方の名称、金額、日々の売上げ・仕入れ・経費の金額等を帳簿に記載します。
帳簿に当たっては、一つ一つの取引ごとではなく日々の合計金額をまとめて記載するなど、簡易な方法で記載してもよいことになっています。
また、収入金額や必要経費を記載した帳簿のほか、取引に伴って作成した帳簿や受け取った請求書・領収書などの書類を整理して保存する必要があります。
帳簿や書類の保存期間は以下の通りになります。
帳簿
- 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法廷帳簿)・・・7年
- 業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿)・・・5年
書類
- 決算に関して作成した棚卸表その他の書類・・・5年
- 業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類・・・5年
※国税庁 「個人事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について」 白色申告の方の記帳・帳簿等の保存制度
青色申告の場合
対象となるのは、不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいる青色申告者でこれらの原則、(一般的には複式簿記)により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付して法定申告期限内に提出します。
必要書類としては、「所得税青色申告決算書(4枚)」と「確定申告書B(2枚+添付書類)」となり、上記の「白色申告」よりも細かな帳簿での手続きにより、税法上の特典があります。
主な特典としては、以下のようになります。
<青色申告特別控除>
事業所得より最高65万円が控除されることになります。
<青色事業専従者給与>
家族が事業に携わっている場合の給料が経費と計上できる。
<純損失の繰越しと繰戻し>
事業所得で赤字がある場合、その赤字を翌年以後3年間にわたって繰り越し所得金額から控除することができる。
※国税庁 №2070 青色申告制度 より
このように、「白色申告」と「青色申告」には違いがあります。
では、フリーランスとして働いている方はどちらで申告したらよいのでしょうか。
「白色申告」が向いている方
フリーランスとして働いていて、個人事業主として申請していない方はまず自動的に「白色申告」になります。
そして、フリーランスとして働き始めたばかりで収入が少ない、帳簿の管理を簡素化している、経費が少ないといった方はこちらの「白色申告」が向いていると言えるでしょう。
「白色申告」についても、経費を計算しなければ所得を計算できないので、確定申告のためには収支のわかる帳簿はつけなければなりません。
しかし、「青色申告」のように細かな費目までの帳簿は必要ないので経理事務に時間をかけられない方には、やはり「白色申告」が向いていると言えます。
「青色申告」が向いている方
フリーランスとして働き始め、事業所得や経費など収支の動きがわかってくると帳簿もつけやすくなり、節税も考えられるようになってくると思います。
フリーランスとして「白色申告」が慣れているのであれば、少し収支が細かくなりますが、メリットの多い「青色申告」をおすすめします。
「青色申告」をすると所得金額から最高65万円又は10万円の控除が受けられるようになります。
青色申告をする場合は、最初に事前申請を税務署に済ませておきましょう。
まず、「青色申告」でも記帳方法の簡単な簡易簿記として申告できる10万円の控除を考えてみたいと思います。
10万円控除の場合
青色申告でも、簡易的な帳簿で10万円の控除を受けることができます。
この簡易簿記には記帳の方法として、さらに「発生主義」と「現金主義」とに分けられます。
発生主義
- 収入や支出の事実が確定した時点の日付で記入する方法
- 申告に必要な帳簿:現金出納帳、売掛帳、買掛帳、固定資産台帳、経費帳
- 所得条件:とくになし
現金主義
- 現金の収入や支出のタイミングの日付で記入する方法
- 申告に必要な帳簿:現金出納帳
- 所得条件:前々年度の所得が300万円以下
このように、所得が300万円以下であれば、青色申告の届けを事前に出しておけば、現金出納帳のみの帳簿で申告することができるで、経理面でもさほど面倒なことはありません。
では、もう一つの控除である65万円の場合はどうでしょうか。
65万円控除の場合
収入が65万円を超えている場合はやはり帳簿の手間はかかりますが、節税のためにはこちらの申請がメリットも大きくなります。
先ほどの10万円の控除と比べて、申告に必要な帳簿が「複式帳簿(正規の簿記)」となり、専門的な経理の知識が必要となります。
記帳方法は10万円控除のところでご説明した、「発生主義」となります。
所得条件はとくにありませんが、申告に必要な帳簿類が、
- 総勘定元帳
- 仕訳帳
以下は必要に応じて、
- 現金出納帳
- 預金出納帳
- 買掛帳
- 売掛帳
- 固定資産台帳
- 給与台帳
などになります。
そして、これらの帳簿等に基づいて申告の際に必要となる書類「決算書」を作成しなければなりません。
この「決算書」は「損益計算書」と「貸借対照表」によって作成されます。
このように、青色申告でも65万円の控除を受けるとなると会計処理に時間がかかりますので、収入がある程度あるならば、経理事務ができる人を雇い、個人から法人として立ち上げた方が節税対策にもなるでしょう。
また、人を雇うと、さらに人件費も経費として計上されるのでメリットも大きくなります。
「白色申告」と「青色申告」の違いがわかったところで、所得税がどのくらい変わってくるのでしょうか。
以下、「白色申告」と「青色申告」の場合とを比較して試算してみたいと思います。
具体例)
- 年間収入700万円
- 必要経費250万円
- 各種控除45万円(基礎控除38万円+その他控除7万円)
<所得税の計算方法>
収入-必要経費-各種控除=課税所得額
課税所得額×税率-課税控除額=所得税額
所得税の速算表
課税される所得金額 | 税率 | 課税控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
※国税庁 №2260 所得税の税率 より
白色申告の場合の所得税
700万円(収入)-250万円(経費)-45万円(控除)=405万円(課税所得額)
405万円(課税所得額)×0.2(税率20%)-427,500円(課税控除額)=382,500円(所得税額)
青色申告の場合の所得税
700万円(収入)-250万円(経費)-45万円(控除)-65万円(青色申告控除)=340万円(課税所得額)
340万円×0.2(税率20%)-427,500円(課税控除額)=252,500円(所得税額)
白色申告の場合、納める所得税額が382,500円となり、青色申告の場合納める所得税額が252,500円となります。
その差額は130,000円にもなります。
同じ収入だとしても、白色申告の場合は130,000円も多く税金を納めることになるのです。
では、現在「白色申告」をしている方が、「青色申告」に切り替えるにはどうしたらよいのでしょうか。
「白色申告」から「青色申告」切り替えるには?
今まで「白色申告」していた方が、「青色申告」に切り替えるには難しい手続きなどはなく、「青色申告承認申請書」を管轄の税務署に提出するだけです。
期日は、その年の申告をする場合には3月15日までに提出しなければなりません。
また、新規開業で申告の年の1月16日以後に開業した場合は、開業から2カ月以内に「青色承認申請書」を提出するようになります。
手続きは申請書を出すだけですが、申告に必要な帳簿類は作成しなければなりませんので、そちらの方が大変になると思います。
切り替えるには、帳簿類を整理してからの方が申告はスムーズにできるでしょう。