リスキリングの必要性は何となく理解しているが
- リスキリングを自社で取り組む必要があるのか曖昧
- どのような企業がリスキリングに取り組むべきなのか
- リスキリングに取り組むことで、どのような効果が得られるのか
といった、悩みを持っている経営者や管理職の方は多いのではないでしょうか。
経済産業省は「DX時代の人材戦略=リスキリング」であると定義しています。
(引用元:経済産業省『リスキリングとは DX時代の人材戦略と世界の潮流』)
つまり
- DX化に伴い、新たな事業戦略を検討している、または実践している
- 人手が不足している
- 人材採用が上手くいかない
という企業は、リスキリングに取り組む必要性があると言えます。
その他、リスキリングに取り組むことで、作業の自動化・工数削減により、業務効率化が行える、といった効果も期待できます。
本記事ではリスキリングが必要される背景、取り組むことで得られる効果、導入する上でのポイントについて紹介していきます。
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Contents
リスキリングが必要とされる背景
著書「自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング」では、リスキリングとは
「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、新しい業務や職業に就くこと」
と定義しています。
(引用: 著書「自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング」)
海外でリスキリングが定着した背景として
- AIなどのテクノロジーの発達により、技術革新や業務の自動化がなされた
- 人間の仕事がロボットやAIに置き換わり、多くの人々の仕事が消失した
といった、「技術的失業」があります。
働く人々を、消失する仕事からAIやロボットなどの、デジタル産業へ移行するための解決策として、リスキリングが有効であるとされています。
2020年1月に開催された、世界経済フォーラムの年次総会では
「2030年までに10億人をリスキリングする」
と宣言していることからも、リスキリングは必須の取り組みであると言えるでしょう。
世界と比べて、DX化が遅れているとされている日本においても、技術的失業は例外ではありません。
具体的なデータを用いて説明していきます。
技術進化により既存業務の27%が自動化され1,660万人の雇用が消失する
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると
「技術進化により、2030年までに日本の既存業務のうち27%が自動化される見込みであり、結果1,660万人分の雇用が代替される可能性がある。」
と述べています。
(引用: マッキンゼー・アンド・カンパニー 「The future of work in Japan」)
あくまでも予測の数値ではありますが、私たちの身の回りにおいても、すでに自動化されている業務は多くあります。
- コンビニやスーパーのセルフレジ
- 飲食店のタッチパネルによる注文
- AIチャットによる問い合わせ対応
他にも自動化されている業務は多数あり、今後も増えていくことでしょう。
過去を振り返ってみても
- 電話の発信者と受信者をつなぐ「電話交換手」
- 写真フィルムを現像する「写真現像屋さん」
など、技術革新によって消失、減少した仕事は多くあります。
技術進化により新たに創出される雇用によって150万人の労働力が不足する
消失される雇用がある一方で、AIやロボットなどのデジタル産業において、新たな雇用も多く生まれています。
マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、2030年の労働力需要は供給を150万人程度上回り、供給が不足すると述べています。
(引用: マッキンゼー・アンド・カンパニー 「The future of work in Japan」)
身近な例として、YouTubeがあります。10年前までは一般的でなかったYouTuberが、新たな職業として認知されました。
個人や企業の発信ツールとしてもYouTubeが用いられ、それに伴いYouTubeの動画編集という仕事も生まれています。
今後も、AIやテクノロジーの発達、YouTubeなどの新たなメディアの誕生により、新たな仕事や雇用が創出されることが予測されます。
企業の経営者は、AIやテクノロジーなどデジタル産業の動向をチェックし、自社のビジネスを成長産業へ移行させることで、世の中から必要とされる存在であり続けることができます
世の中の動向をチェックし、成長産業や新たなビジネスを行うためにも、リスキリングは必要と言えるでしょう。
意欲のある優秀な社員が離職する可能性がある
企業と社員の間で、リスキリングに対する取り組みへの意識に差が生じることで、社員が離職する可能性が考えられます。
株式会社ビズリーチの調査では
- リスキリングに取り組むビジネスパーソンは67.6%
- リスキリングに取り組む企業は26.3%
との回答が得られました。
(出典:Q.現在リスキリングに取り組んでいますか?|株式会社ビズリーチ)
(出典:Q.あなたの会社では、現在リスキリングに取り組んでますか?|株式会社ビズリーチ)
また、95.0%のビジネスパーソンが、将来的に新たなスキルを身につける必要性がある、と回答しました。
(出典:Q.ご自身のスキルについて、将来的に新たなスキルを身につける必要があると感じますか?|株式会社ビズリーチ)
本来は企業が主体となって取り組むリスキリングが、個人が主体となって取り組む割合が増加してきています。
多くのビジネスパーソンが、リスキリングに取り組むことで、自分自身をスキルアップさせ、成長産業で働きたい、と考えていると言えます。
企業がリスキリンに取り組まないでいると、意識の高い社員ほど、成長機会を提供している企業へ転職する可能性は大いにあります。
企業側がリスキリングの機会を提供し、意識の高い優秀な社員が活躍できる環境を提供することも、人材戦略の上で、大切なことと言えるでしょう。
(引用: 株式会社ビズリーチ「67.6%の即戦力人材が「リスキリング」を実施。一方で、リスキリングに取り組む企業は26.3%にとどまる」)
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リスキリングがもたらす効果
リスキリングがもたらす効果として、人材採用コストの削減が挙げられます。
人材採用や人材不足に、課題を抱えている企業は多いかと思いますが、リスキリングを実施することで、人材採用コストの削減が期待できます。
また、リスキリングを実施し、デジタル技術を学ぶことで、作業の自動化や短縮がなされて、業務効率化が行えます。
新たな人材への投資が削減できる
企業、特にリソースが限られている中小企業にとって、新たな人材への投資は大きな負担になります。
また、業務を外注する場合にもコストが発生します。
そのためリスキリングにより、社員に新たなスキルを習得してもらうことが、最善の方法であると考えられます。
著書「自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング」でも、
- 世界的に有名な人事コンサルタント、ジョシュ・バーシン氏が述べている説として、企業にとって最大のメリットは、採用コストと比較して、従業員へのリスキリングコストは1/6で済む
- ある分析結果では、リスキリングの成果を出すためには、平均で12カ月から18カ月かかるという試算があるものの、それでも採用と比較してコストが安い
と述べています。
(引用: 著書「自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング」)
作業の自動化により業務効率化が行える
デジタル技術を活用することで、作業の自動化や工数削減を実現できます。
作業の自動化や工数削減の例として
- AIチャットによる問い合わせ対応
- ARを活用したECサイト商品のバーチャル試着
- VRを活用した不動産の内覧
が挙げられます。
また、自動化や工数削減により
- 社員が複数の業務をこなす「マルチタスク」が可能となる
- 社員の「ワークライフバランス」が実現できる
- 学習時間が確保でき、新たなスキルや知識の学習が行える
といった、副次的効果も期待できます。
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リスキリングを成功に導くためのポイント
リスキリングは、企業が主体となって行う業務の一つです。
企業の事業戦略を基に、学ぶべきスキルを洗い出し、成長産業に参入するためのスキルを学ぶ環境を提供します。
また、リスキリングによって得たスキルや、知識を活かす「場」を提供することも大事です
企業の事業戦略を基にリスキリングで学ぶスキルを洗い出す
リスキリングを成功に導くための第一歩として、成長産業へ参入するために「学ぶべきスキル」は何かを決めることです。
企業の事業戦略を基に
- 成長産業へ参入するために必要なスキル
- 企業、社員が持っているスキル
を洗い出します。
成長産業へ参入するためのスキルと、企業、社員が持っているスキルの差分が、学ぶべきスキルとなります。
世界経済フォーラムの「Future of Jobs Report 2023」では、「最も成長著しい職種トップ10」として
- AIおよび機械学習スペシャリスト
- サステナビリティ分野のスペシャリスト
- ビジネスインテリジェンス・アナリスト
- 情報セキュリティ・アナリスト
- フィンテック分野のエンジニア
- データサイエンティストおよびデータアナリスト
- ロボティクス分野のエンジニア
- 電気工学エンジニア
- 農業機械のオペレーター
- デジタルトランスフォーメーション・スペシャリスト
を挙げています。
IT・デジタル分野が多数を占めていますが、2位が環境分野となっています。
また、最近だと宇宙分野の事業も注目されています。
学ぶべきスキルの洗い出し、事業戦略を策定する際に、これらの情報をキャッチアップしておくことも重要です。
(引用: 著書「Future of Jobs Report 2023」)
社員が学習に取り組みやすい環境を提供する
リスキリングに取り組むにあたっての社員の学習は、業務の一貫であると、企業側が認識することが大切です。
そのために、企業側が社員が取り組みやすい環境を提供する必要があります。
- 社員には業務時間内に学習をしてもらう(残業や業務時間外での学習を強要しない)
- 他の社員へ、学習を行うことに対する理解と協力を求めておく
- 社員の学習に対するモチベーションを維持させる
- 昇給や昇格、資格手当を設ける
- 定期的に経営者や上司による面談を実施して、メンタル管理を行う
- 同じ環境で学習している人達のコミュニティを作り、孤独感を与えない
社員が学習したスキルを活かせる環境を提供する
学習後は、学んだスキルを活かせる環境を提供します。
- 業務に必要となるツールやソフトの提供
- 学習したスキルを活かせる部署への配置転換
- 業務のパフォーマンスを上げるための継続的な学習機会の提供
企業によっては社員に学習だけさせて、スキルを活かせる場を提供しないケースもあります。
多くの時間を費やし、苦労して習得したスキルを活かせる環境がないと、社員のモチベーションが低下し、スキルを活かせる他の環境へ転職してしまうこともあります。
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リスキリングの取組事例
リスキリングを導入して成果を上げた、3社の事例を紹介します。
- 経営者主導で知識を底上げしデジタルを使いこなす企業へ – 隂山建設株式会社
- 老舗印刷業からデジタルソリューション事業へ – 西川コミュニケーションズ株式会社
- デジタルの活用で倒産寸前から立て直しを実現 – 株式会社陣屋
隂山建設株式会社
福島県の建設会社、隂山建設は建設現場に特化したアプリを自社開発しました。結果として業務効率の改善や、アプリの販売事業につながりました。
また、建設現場の写真画像撮影のため、ドローン操縦免許を多くの従業員が取得しています。企業説明会でドローンを飛ばすなどして、採用活動においても同業他社と差別化を図っています。
(引用元: リクルートワークス研究所 隂山建設株式会社:経営者主導で全員の知識を底上げし、スクラムでデジタルを使いこなす企業を目指す)
西川コミュニケーションズ株式会社
愛知県の創業100年を超える老舗企業、西川コミュニケーションズは、従業員に各種デジタル技術を習得してもらうことで、紙媒体の印刷事業からデジタル技術を活用したビジネスへの転換を果たしました。
2018年にAIを成長戦略の中核に据え、社長自身がAI関連の資格を取得し、スキル獲得の重要性をアピールして従業員の意識改革に取り組みました。
(引用元: リクルートワークス研究所 西川コミュニケーションズ株式会社:経営者がDXの方向を示し、学びを支援することが、リスキリングする組織を創る)
株式会社陣屋
神奈川県の老舗旅館、陣屋は旅館管理システムを自社開発し、業務効率を改善し、従業員の働き方の改革にも取り組みました。
旅館管理システムで、食事の好みなど顧客の過去のデータを、顧客との会話や食事の献立に反映することで顧客満足度を向上させ、常連客のリピート率が上げることで売上げアップを実現させました。
(引用元: リクルートワークス研究所 株式会社陣屋:倒産寸前の老舗旅館 データを使いこなす接客人材を育てた経営者と女将の取り組みとは)
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リスキリングの必要性に関するまとめ
本記事では、リスキリングの必要性と効果について解説してきました。DX時代の人材戦略と言われていることから、多くの企業でリスキリングが必要であると言えます。
しかし、多くの企業で、特に中小企業はリソースに限りがあるため、すぐに取り組めないことが多いかと思います。
まずは、自社や社員のスキルの洗い出しから始めてみるのも良いでしょう。
出来ることから、少しずつ取り組んでいくことが大切です。
また、リスキリングは企業が主体となって取り組むべきですが、社員が何を学んでみたいか知ることも大切です。
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