厚生年金に加入している方は、国民年金に加えて厚生年金が支給されることになりますが、フリーランス(個人事業主)として働いている方は、国民年金だけで老後の生活に不安を感じることがありませんか?
その年金だって、今後どのくらいもらえるかもわからないから老後のために貯蓄をしなければ・・・、なんて言葉もよく耳にされることでしょう。
そんな不安を解消するためには、貯蓄以外の「資産形成」の方法を知っておく必要もあると思います。
では、具体的に「資産形成」なんて、どうすればいいの?という疑問が生まれてきます。
今回は、老後の始まりから老後に関する話を中心に、フリーランスなど個人事業主の方でも老後に不安を抱くことのないように「資産形成」とその資産形成に関係する「iDeCo」について解説していきたいと思います。
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いつから「老後」が始まる?
よくテレビでも年金問題などで、老後が心配・・・、という話を聞くことがあると思います。
まだ20代、30代の方はあまり気になることもないと思いますが、40代、50代と年を重ねるごとに今後の将来のことが気になってくることでしょう。
徐々に近づいてくる「老後」とは、世間ではどのように考えられているのでしょうか。
生活設計と生命保険に関する情報を提供している生命保険文化センターでは、「老後」について、
公的年金や退職金以外に準備した資金を生活費として使い始める年齢を老後生活の開始時期
として「生活保障に関する調査」の中で、老後資金の使用開始年齢の割合が以下のようになっています。
- 60歳・・・18.4%
- 61歳~64歳・・・2.2%
- 65歳・・・39.5%
- 66歳~69歳・・・2.2%
- 70歳・・・18.2%
- 71歳以上・・・3.3%
- わからない・・・14.4%
4割近くの方は、65歳から老後資金の使用が始まります。
次に、60歳、70歳と続きます。
平均としては、65.1歳になっています。
生命保険文化センター:「老後」とはいつから?
そして、この「老後」を過ごすことになる期間はどのくらいになるのでしょうか。
「老後」を過ごす期間とは
前項で「老後」はいつからという話をしましたが、その老後を過ごす期間は老後の資金を使う65歳ぐらいから続くという訳です。
この65歳から過ごす老後の期間は、厚生労働省の資料「平成29年簡易生命表」の中で日本人の平均余命として記されています。
簡易生命表とは、1年間の死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、各年齢のものが1年以内に死亡する確率や、平均してあと何年生きられるかという期待値などを、死亡率や平均余命などの指標(生命関数)によって表したものです。
この簡易生命表によると、65歳男性の平均余命は19.57歳、65歳女性の平均余命は24.43歳となっています。
このおよそ2,30年が老後を過ごす期間となるのです。
この数値だけ見ると、老後の生活を過ごすのに十分な蓄えができるか不安になります。
そこで、「資産形成」ということが大事になってきます。
老後のいろいろな「寿命」とは?
日本人の平均寿命は前述の「平成29年簡易生命表」によると、平成29年では男性が81.09歳で女性は87.26歳となっております。
このように、「生命の寿命」の他にも老後に関して「健康の寿命」と「試算の寿命」があることをご存知ですか。
老後の生活を送るために、この3つの「寿命」が大事になってきます。
「生命の寿命」と「健康の寿命」の差が不健康な期間
「生命の寿命」とは、いわゆる「平均寿命」のことで生まれて0歳からその後何年生きられるかという「平均余命」のことを指します。
また、「健康の寿命」とは、「平均寿命」に対して、衰弱・病気・痴呆などによる介護期間を除き、どのくらい健康で生きられるかと、いう指標になります。
この「平均寿命」と「健康寿命」の差が大きくなると、日常生活に制限のある「不健康な期間」が長くなることになり、老後に医療費や介護費用などの負担が大きくなります。
この負担を減らすためにも、「健康寿命」を伸ばすことが大事になってくるのです。
厚生労働省:「平均寿命と健康寿命を見る2」
「資産の寿命」を延ばす「資産形成」がカギ
「生命の寿命」が長くなるとともに、同じように長くしていかなければならないのが、「資産の寿命」です。
定年を迎え老後生活に入るとき「資産の寿命」が尽きていたらどうなるでしょうか。
厚生年金に加入していない、フリーランスなどの個人事業主は国民年金として平成30年度では月額64,941円(67歳以下の方)の受給となります。
これだけで老後を過ごしていくにはやはり不安があります。
そこで「資産の寿命」延ばすためにも、資産を運用して増やしていく「資産形成」がカギとなるのです。
「資産形成」していくには
ひと昔前は、退職金を銀行に預けておけば利息がお小遣いになると言われるほど金利が高い時代でしたが、1990年代後半頃からは金利が低下し始め銀行に預けていても利息はほとんどつかないような状況になってしまいました。
貯金をしていても、利息が付かなければ資産を増やすことも難しくなってきます。
そこで、老後に入る前に「投資」をして積極的に資産を運用して増やしていくのです。
その「投資」として利用できるのが「iDeCo」なのです。
「iDeCo」(個人型確定拠出年金)とは?
「iDeCo」って聞いたことがありますか?
最近はテレビや新聞などで目にする機会も多くなってきたと思いますが、「iDeCo」とは自分で決めた額(掛金)を積み立てて運用し、60歳以降に公的年金にプラスして受け取ることができる私的年金です。
そして、大きな税制優遇が特徴となっています。
加入する際は、金融機関により運用商品や手数料、サービスなどが異なりますので、どのような商品を扱っているか、その商品の特徴や利率、注意する点などをよく確認しましょう。
加入できる方
- フリーランスなど個人事業主(国民年金第1号被保険者)
- 厚生年金の被保険者(国民年金第2号被保険者)
- 専業主婦(夫)(国民年金第3号被保険者)
拠出限度額(掛金限度額)
「iDeCo」の掛金は、月々5,000円以上から1,000円単位で以下の上限額の範囲内で設定することができます。
1.個人事業主等 68,000円/月
2.厚生年金の被保険者
- 厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施している場合 12,000円/月
- 企業型年金のみを実施している場合 20,000円/月
- 企業型年金や厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない場合 24,000/月
- 公務員、私学共済制度の加入者 12,000円/月
3.専業主婦(夫) 23,000円/月
基本的には、60歳以上にならないと引き出せない資産となります。
資産運用について
「iDeCo」には、「元本確保商品」と「投資信託」の2種類の商品があります。
「元本確保商品」とは
原則として元本が確保されている商品で、利息が上乗せされる定期預金や保険商品などがあります。
「投資信託」とは
投資家から集めたお金を運用の専門家が株式や債券などに投資・運用し、成果が出れば投資額に応じて分配されます。
運用の際に利益が出ることもあれば損失が出る場合もあります。
投資信託の主な種類として、国内・外国債券型、国内・外国株式型、複数の資産を組み合わせたバランス型、不動産投資信託などがあります。
どのくらい税制優遇されるのか
「iDeCo」のメリットとして以下の税制優遇があります。
- 掛金が全額所得控除される。
- 確定拠出年金制度内での運用益が非課税になる。
- 受給時に所得控除を受けられる。
通常の投資では、投資額や運用益に対して所得税や住民税が掛けられますが、「iDeCo」の場合、月々の積立額や運用益が控除の対象となります。
では、どのくらい控除されるのか、以下の例でみてみましょう。
例)年収400万円 年齢30歳 掛金毎月5,000円
年齢 | 30歳 |
掛金/月 | 5,000円 |
年収/年 | 4,000,000円 |
給与所得控除/年 | 1,340,000円 |
社会保険料控除/年 ※1 | 568,800円 |
基礎控除/年 ※2 | 380,000円 |
1年間 | iDeCo加入 | iDeCo未加入 |
課税所得額 ※3 | 1,651,200円 | 1,711,200円 |
所得税額 | 82,560円 | 85,560円 |
住民税額 ※4 | 165,120円 | 171,120円 |
30歳~60歳までの30年間 | iDeCo加入時の軽減額 | iDeCo未加入 |
所得税軽減額 | 90,000円 | 0円 |
住民税軽減額 | 180,000円 | 0円 |
税制優遇額 | 270,000円 | 0円 |
積立総額 | 1,800,000円 | 0円 |
※1 年収の14.22%として計算しています。
※2 一律380,000円として計算しています。
※3 課税所得=年収-給与所得控除-社会保険料控除-基礎控除として計算しています。
※4 一律10%として計算しています。
このように30年間、毎月5,000円を掛け続けると270,000円の税制優遇を受けることができることになります。
60歳になれば、積立総額1,800,000円と運用益分が年金として受け取ることができます。
「iDeCo」公式サイト:https://www.ideco-koushiki.jp/start/
まとめ
まだ、老後は先の話と思っている方もたくさんいらっしゃると思います。
しかし、先のわからない話だからこそ早めに考えておくことが大事です。
「iDeCo」は毎月少しずつでも始めることができるので、老後を安心して過ごせるように、今からでも「資産形成」のこと、考えてみてはいかがでしょうか。