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AIマーケティング分析とは
AIマーケティング分析は、顧客、サイト、広告などのデータから傾向を見つけ、施策の判断に役立てる取り組みです。AIは大量の情報の整理や分類、傾向の比較、改善に向けた仮説出しなどを支援します。
分析にAIが求められる背景には、顧客との接点が分かれてきたことがあります。検索、SNS、広告、問い合わせなどの接点ごとに、データが別々の場所にたまります。そのため、形をそろえて整理したり、自由に書かれた顧客の声を分類したりするだけで多くの手間がかかります。整理と分類をAIに支援させると、担当者は数字を読み、施策を決めることに時間を使いやすくなります。
対象となるデータには、購買履歴、サイトの閲覧状況、広告への反応、問い合わせ内容、SNS上の投稿などがあります。たとえば、問い合わせにつながりやすいページの特徴を調べたり、顧客の声から繰り返し出てくる疑問を整理したりできます。
AIの出力は、施策を選ぶための材料です。何を改善するか、結果をどう解釈するか、どの施策を実行するかは、事業の目的や顧客の事情を踏まえて担当者が判断します。
AIマーケティング分析の活用事例6選
| 企業 | 分野 | 何に使ったか | 何を変えたか |
|---|---|---|---|
| 楽天グループ | 商品検索 | 検索語と商品を照らし、検索意図を捉える技術を導入(2024年3月) | 楽天市場と Rakuten Fashion で、検索結果が0件になる検索を1%未満まで減らした |
| スターバックス(米国) | 購買・個別のおすすめ | AIの取り組み「Deep Brew」で、取引・時間帯・店舗の立地・天候などのデータを活用(2019年11月の報道) | データを顧客ごとのおすすめに生かすと当時のCEOが説明。アプリの注文・決済もアルゴリズムを使う先の一つ |
| イオンリテール | 需要予測・発注 | 需要予測・発注システム「AIオーダー」を約380店に導入。過去の販売実績・曜日・価格・気温・プロモーションなどを機械学習(2023年4月発表) | 発注時間を平均で5割削減、予測精度は既存システムと比べ最大40%改善、在庫を平均3割削減(同社の発表) |
| 電通デジタル | 広告 | バナー生成ツールにクリエイティブの評価機能を搭載(2019年5月) | 作ったバナーを、狙う成果に合わせて AI が選び分けられるようにした |
| 日清食品 | 顧客の声・商品企画 | カップヌードルにまつわる思い出の傾向を生成AIで分析(2024年9月) | 約1,560件のエピソードから「家族や友人と一緒に食べる人が多い」という傾向をつかんだ |
| はるやま商事 | 顧客の商品選択 | AIを用いたスーツ姿の診断サービスを導入(2017年9月) | 約2,000着のスーツスタイルを学んだ AI が、似合う度を100点満点で判定して提案するようにした |
以下では、それぞれの事例を関係の深い分野の節で取り上げ、使った情報と使い方を紹介します。分野別の節では、自社のデータで試すときの問いや、道具の使い方も取り上げます。
AIを分析に使うメリットと限界
- 作業時間:集計や文章の分類をAIに支援させると、担当者が結果の確認や施策の検討に時間を使いやすくなります。
- 扱えるデータ量:購買履歴や多数の顧客の声など、人が一つずつ確認するには時間がかかる情報を整理する助けになります。
- 仮説の幅:媒体別、顧客グループ別、ページ別など、異なる切り口で傾向を見て、改善候補を考えられます。
- 限界:データの偏りや欠損が結果に影響します。AIが示した関連だけで原因を決めず、元データや現場の情報と照らす必要があります。
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分野別の使い方と企業事例
顧客分析:異なるニーズを整理する
顧客分析では、誰がどのような理由で商品を選び、利用しているかを探ります。購入履歴、利用状況、問い合わせ内容などを目的に合わせて整理すると、年齢や地域だけでは見えない違いを考える材料になります。
セグメンテーション(顧客を共通する特徴で分けること)では、たとえば購入頻度や利用目的をもとにグループを作ります。クラスタリング(似た顧客をまとめる方法)を使い、データから分類の候補を探すこともできます。分けた後は、各グループの顧客の声と照らし、伝える内容や提供方法を検討しましょう。
事例:はるやま商事。 同社は、AIを用いてスーツ姿を診断するサービスを発表しました。顧客が商品を選ぶ場面に、診断を組み込む使い方です。発表は2017年9月です。志望業界や体型、スーツ姿の写真をもとに、約2,000着のスーツスタイルを学んだ AI が似合う度を100点満点で判定し、コーディネートを提案します。顧客を集団ごとに分析する事例とは異なります。それでも、一人ひとりの特徴を読み取って選択を手伝う例として参考になります。はるやま商事の発表(2017年9月)
- 道具と使い方の例:顧客管理の仕組み(CRM)から購入頻度と問い合わせの種類を書き出す→Excel や Google スプレッドシートで顧客ごとに集計する→ChatGPT や Claude に分け方の候補を出させる
- AIに渡す問いの例:「購入頻度と問い合わせ内容をもとに、顧客の特徴を整理する切り口を表にしてください。各切り口で追加確認したい点も挙げてください」
顧客生涯価値(LTV)を見る場合は、売上だけでなく継続期間や提供コストも含め、目的に合う指標を選びます。将来の価値を推定するときは、実績と予測を分けて記録し、後から差を確認します。
顧客行動分析:迷いや離脱の箇所を探る
顧客行動分析では、サービスを知ってから比較し、問い合わせや購入に至るまでの流れを見ます。検索、広告、サイト閲覧、メールなどの接点を並べ、どの段階で次に進む人が少なくなるかを整理します。
たとえば Google アナリティクスで、入口ページごとに次のページへ進んだ割合と、問い合わせフォームに到達した割合を出します。サイト内検索がある場合は、検索された言葉と、検索後に何も開かれずに終わった言葉を並べます。訪問者が探しているのに見つけられない情報の候補が見えてきます。特定のページから先へ進む人が少なければ、訪問者が知りたい内容、ページの説明、次の行動を促す案内を確認します。
- 道具と使い方の例:Google アナリティクスで流入元別・入口ページ別の訪問数と、受け付け完了ページまで進んだ訪問の数を出す→Excel や Google スプレッドシートで問い合わせ率(問い合わせ数÷訪問数。数え方は後の「小さく始める手順」と同じ)を計算する→ChatGPT や Claude に、率が低いページを数字の上で挙げさせる→挙がったページは担当者が開いて内容を確かめ、題名や本文も渡して仮説を出させる
- AIに渡す問いの例:「対象期間の流入元別・入口ページ別の訪問数と問い合わせ率を整理し、次に確認したいページを挙げてください」
行動の記録だけで離脱理由を決めるのではなく、問い合わせ内容や利用者の声も合わせて見ます。AIが挙げたページを実際に開いて確かめ、説明や導線に改善の余地があるかを担当者が判断しましょう。
購買分析とレコメンド:次の行動につながる情報を考える
購買分析では、どの商品が一緒に選ばれやすいか、購入後にどのような商品が選ばれるかを整理します。レコメンドは、閲覧や購買の傾向に合わせて商品や記事の候補を提示する方法です。ここでは、顧客が商品を探す場面の事例と、顧客ごとにおすすめを変える事例を紹介します。
事例:楽天グループ(商品検索)。 同社はECで、検索語と商品の単純な一致だけでなく、検索意図を捉える技術を導入しています。使う情報は利用者の検索語と商品に関する情報で、顧客が商品を探す場面に技術を使う事例です。発表は2024年3月です。楽天市場と Rakuten Fashion で、検索結果が0件になる検索を1%未満まで減らしました。楽天グループの発表(2024年3月)
事例:スターバックス(米国・個別のおすすめ)。 同社のAIの取り組み「Deep Brew」では、取引、時間帯、店舗の立地、天候などのデータを顧客ごとのおすすめに生かすと、当時のCEO ケビン・ジョンソン氏が説明しました。アプリでの注文・決済も、アルゴリズムを使う先の一つに挙げられています。2019年11月に Restaurant Dive が報じました。Restaurant Dive の記事(2019年11月)
楽天グループの事例は個別のおすすめではなく商品検索の改善です。商品名の一致だけでなく、顧客が何を探しているかを捉える視点は、おすすめを考える前提として役立ちます。スターバックスは、取引や時間帯、店舗の立地、天候などのデータを顧客ごとのおすすめに生かすと説明しています。購入時の状況を購買の記録に重ねるという考え方です。自社の購買履歴を見るときも、何が売れたかに加えて、いつ、どこで、どの経路で買われたかを同じ表に並べましょう。案内を出し分ける手がかりが増えます。
- 道具と使い方の例:購買データを管理する仕組みから注文ごとの商品・日時・経路を書き出す→Excel や Google スプレッドシートで組み合わせごとの件数を数える→ChatGPT や Claude に、案内を検討できる組み合わせと確かめたい点を挙げさせる
- AIに渡す問いの例:「対象期間の購買履歴から、一緒に選ばれた商品の組み合わせを、購入した時間帯と経路別に整理し、関連情報の案内を検討できる組み合わせを挙げてください」
候補を提示した後は、表示した情報が選ばれたか、その後の行動につながったかを確認します。過去の行動から次の購入を予測する場合も、予測と実際の結果を比較し、外れた条件を記録します。ある商品が一緒に購入されたという傾向だけで、すべての顧客に同じ案内を出すとは限りません。
需要分析:販売と供給の見通しを立てる
需要分析では、過去の販売状況、季節、販促、在庫などを材料に、今後の需要を考えます。販売の見通しは、広告予算だけでなく、商品準備や担当者の配置を検討する際の材料にもなります。
事例:イオンリテール。 同社は、需要予測・発注システム「AIオーダー」を約380店に導入したと発表しました。過去の販売実績、曜日、価格、気温、プロモーションなどをAIに機械学習させ、需要の予測を発注に生かす使い方です。練り物・豆腐・パン・デザートなどの日配品から始めています。発表は2023年4月です。同社の発表では、発注にかかる時間を平均で5割削減し、予測精度は既存システムと比べて最大40%改善、在庫を平均で3割削減したとしています。イオンの発表(2023年4月、PR TIMES)
この事例で参考にしたいのは、販売数だけでなく、曜日、価格、気温、販促といった需要を動かす条件を一緒に学ばせている点です。自社で見通しを立てるときも、まず販売数とこれらの条件を同じ表に並べることから始められます。
- 道具と使い方の例:販売データを日別に書き出す→Excel や Google スプレッドシートで曜日・価格・販促の有無・気温の列を加える→ChatGPT や Claude に変動の大きい条件を整理させる→本格的に予測する段階では、予測に使うAIの導入を検討する
- AIに渡す問いの例:「過去の販売数を曜日、価格、販促の有無、気温で整理し、需要の見通しを立てる際に確認したい変動を表にしてください」
期間ごとの販売数を同じ条件で並べ、販促や在庫の状況も対応させます。AIが示した傾向を確認したら、現場が把握する事情を加え、複数の見通しを考えます。実際の販売状況が出た後は、見通しとの差と、その差を考えるための情報を記録しましょう。
急な市場変化や新商品のように過去のデータが少ない場面では、過去の傾向だけでは捉えにくい変化があります。推定値を一つの材料として扱い、計画を継続的に見直します。
コンテンツ分析:読者の疑問と次の行動を見る
記事や動画の分析では、閲覧数に加えて、検索からの訪問、ページ内の行動、問い合わせなどを目的に合わせて見ます。多く読まれていても問い合わせにつながらない場合は、読者の求める情報と案内内容が合っているかを確認します。
事例:日清食品。 同社はカップヌードルにまつわる顧客の思い出を調査し、集まったエピソードの傾向を生成AIで分析しました。顧客の言葉を整理し、商品企画につなげる使い方です。発表は2024年9月です。約1,560件のエピソードを分析し、「ひとりで食べる」印象が強い商品でも、家族や友人と一緒に食べる人が多いという傾向をつかみました。日清食品の発表(2024年9月)
この事例のように文章を整理する考え方は、検索語や問い合わせ内容から読者の疑問を探す際にも使えます。繰り返し出てくる疑問を記事の構成や見出しに反映し、公開前に事実と根拠を確認します。
- 道具と使い方の例:
- Google アナリティクスの探索レポートで、記事を入口ページにした訪問の数と、そのうち受け付け完了ページまで進んだ訪問の数を記事ごとに出す。数えるのはその記事から入った訪問の問い合わせで、ほかのページから入って記事を読んだ人の問い合わせは含まれない
- 問い合わせ本文から氏名・会社名・連絡先と、組み合わせると相手が分かる記述や社外秘の情報を消し、分類に要る部分だけを残す
- 使う生成AIのサービスで、入力内容が保存されるか、学習に使われるか、誰が見られるかを確かめる
- ChatGPT や Claude に、問い合わせと検索語を話題ごとに分類させ、関係する記事の本文も渡して、記事が答えていない疑問を挙げさせる。挙がった疑問は担当者が記事を読み直して確かめる
- AIに渡す問いの例:「問い合わせ内容と検索語を話題ごとに整理し、既存の記事で説明を確認したい疑問を挙げてください」
反対に、閲覧数は少なくても相談につながる記事があれば、どのような悩みに答えているかを確認します。同じ悩みを持つ読者が見つけやすいよう、関連ページからの案内を整えることも改善候補です。
広告分析:費用と事業上の成果を照らす
広告分析では、媒体や広告ごとに表示、クリック、問い合わせなどを比較します。クリックが多くても問い合わせにつながらない場合は、広告の訴求と遷移先の内容が合っているかを確認します。
事例:電通デジタル。 同社は、広告バナーを生成するツールにクリエイティブの評価機能を搭載したと発表しました。広告案を作るだけでなく、評価にもAIを使う形に変えた事例です。発表は2019年5月です。作ったバナーを、狙う成果に合わせて AI が選び分けられるようにしました。電通デジタルの発表(2019年5月)
自社で広告案を比べるときも、「どの成果を狙う広告か」を先に決めておくと、評価の基準がぶれにくくなります。
- 道具と使い方の例:広告の管理画面から媒体別・広告別の費用とクリック数を出す→広告ごとに付けた計測用のパラメータ(URL の末尾に付ける目印)で、Google アナリティクスの広告経由の問い合わせ数を出す→期間と数え方(管理画面とアナリティクスでは成果の数え方が違う)をそろえたうえで、Excel や Google スプレッドシートで突き合わせ、そろわない数字は別の列に分ける→ChatGPT や Claude に、費用の割に問い合わせが少ない広告と確かめたい点を挙げさせる
- AIに渡す問いの例:「対象期間の媒体別・広告別の費用、クリック数、問い合わせ数を表にまとめ、訴求と遷移先を確認したい広告を挙げてください」
配信の自動調整を使う場合も、設定した目標によって集まる成果は変わります。問い合わせ件数だけでなく、事業に合う相談か、商談や契約へ進んだかも確認し、広告側の指標と事業側の成果を照合します。
SNS分析:顧客の言葉から企画のヒントを探す
SNS分析では、投稿やコメントを話題ごとに整理し、商品への期待や分かりにくい点を探ります。AIは文章を分類し、繰り返し登場する話題をまとめる作業を支援できます。
参考事例:日本ケンタッキー・フライド・チキン。 同社がSNS分析ツールのテキストマイニングと、投稿の肯定・否定を自動で見分ける機能を使い、2022年のキャンペーンへの反響や口コミを確認した事例を、ツール提供元が紹介しています。顧客がどのような言葉で反応したかを、次の企画の材料にする使い方です。社内向けレポートの作成は、半日以上から約1時間に短くなったとされています。ユーザーローカルの導入事例
- 道具と使い方の例:SNS分析ツールで対象期間の投稿を集める→Excel や Google スプレッドシートに話題と肯定・否定の判定を並べる→投稿の本文も判定と同じ行に並べ、ChatGPT や Claude に話題ごとの要点と、判定の怪しい投稿を挙げさせる→挙がった投稿に加え、肯定・否定それぞれから無作為に選んだ投稿も、担当者が元の投稿と見比べる
- AIに渡す問いの例:「対象期間の投稿やコメントを話題別に整理し、商品への期待と分かりにくい点をそれぞれ挙げてください」
整理した話題は、FAQや商品説明、次の企画を考える材料にできます。一方、投稿した人が顧客全体を代表するとは限りません。少数の強い意見だけで結論を出さず、投稿の背景やほかの顧客の声と照らして使います。
顧客維持分析:解約の兆しをつかみ、先に連絡する
顧客維持では、利用頻度、問い合わせ、契約更新などの傾向を見ます。チャーン予測(解約につながる可能性を見積もること)は、大がかりな仕組みがなくても、次の手順で試せます。
- 材料を並べる:過去に解約した顧客と継続している顧客について、契約の開始から同じ月数たった日など、基準になる日をそろえます。基準日の前の同じ長さの期間の利用状況を並べ、基準日の後の同じ期間に解約したかどうかを見ます。ログイン頻度の低下、特定の機能を使わなくなったこと、問い合わせの増加、契約更新の時期などが材料になります。
- AIに違いを整理させる:「解約した顧客と継続した顧客で、基準日の前の利用状況と問い合わせにどのような違いがあるかを表にし、解約の前によく見られる兆しの候補を挙げてください」と頼みます。
- 兆しの条件を決める:AIが挙げた候補を元データで数え直し、担当者が条件を決めます。たとえば「主要な機能を使わなくなり、その後に問い合わせが続いた顧客」のように、現場で判断できる言葉にします。
- 危ない顧客に印を付け、二つに分ける:条件に当てはまる顧客に印を付けます。先に担当者が、すぐ対応が要る顧客(障害や強い不満の申し出がある顧客など)がいないかを確かめ、いれば通常どおり対応します。残りの顧客を、可能なら無作為に二つに分け、片方にだけ、解約の申し出を受ける前に担当者から追加で連絡します。使い方の案内や、困っていることの聞き取りが連絡の中身になります。担当者が連絡しやすい顧客を選ぶと、もともと続けそうな顧客に偏ることがあるため、選び方を人の判断に任せないようにします。
- 同じ期間で結果を比べる:二つのグループについて、連絡の後の同じ期間が終わった時点で、まだ契約が続いている顧客の割合を比べます。差が出ても、すぐに対象を広げず、それぞれの人数が少なすぎないか、契約更新の時期や利用期間、契約の規模などに偏りがないかを確かめます。そのうえで、連絡の対象を広げるか、条件や連絡の中身を見直すかを判断します。
利用頻度が低いだけで不満があるとは限りません。営業やサポートが把握する事情も合わせ、連絡の必要性と内容を担当者が判断します。解約した人だけでなく、長く利用している人の理由も調べると、提供価値を考える材料になります。
BtoBの見込み顧客分析:連絡の順番を決める
BtoBでは、資料請求やセミナー参加で集まった見込み顧客のうち、誰から先に連絡するかが、商談の数に影響することがあります。ここでは一つの通し例で流れを追います。
使うデータ。 最初に、資料請求・セミナー参加・サイトの閲覧・メールの開封を、顧客管理の記録の同じ見込み顧客に結び付けられるかを確かめます。結び付けられない項目は推定で埋めず、使える項目だけで進めます。そのうえで見込み顧客ごとに、資料請求、セミナーへの参加、サイトで閲覧したページ(料金、導入事例、機能紹介など)、メールの開封を、それぞれ起きた日時と一緒に一つの表にまとめます。過去の見込み顧客については、商談になったかどうかと、商談になった日時の列も加えます。比べるときは、資料請求から決まった日数がたった時点を区切りにします。その時点でまだ商談になっていない顧客だけを対象にし、区切りまでの行動と、区切りの後の同じ期間に商談になったかを比べます。区切りより前に商談になった人を入れると、商談の後に見た料金ページなどが材料に混ざり、原因と結果を取り違えるためです。これから連絡の順番を決めるときも、順番を決める時点までに分かっている行動だけで判断します。生成AIに渡す前に、使うサービスで入力内容が保存されるか・学習に使われるか・誰が見られるかと、社内の決まりを確かめます。担当者名や連絡先など個人を特定できる列は外して見込み顧客ごとの番号で管理し、会社名や細かな日時の組み合わせで相手が分かりそうなら、業種や週の単位にまとめます。顧客ごとの表を入れられない場合は、行動の組み合わせごとの件数に集計してから渡します。
AIへの問いの例。 「過去に商談になった見込み顧客と、ならなかった見込み顧客について、区切りの時点までに起きたセミナー参加・閲覧ページ・メール開封の違いを表にしてください。それぞれのグループの人数と、行動ごとの人数と割合を出してください。関心が高いと考えられる行動の組み合わせを挙げ、組み合わせごとの対象人数と商談になった割合も添えてください」
担当者が確かめること。 AIが挙げた組み合わせの人数と割合を元の表で数え直し、人数が少なすぎる組み合わせでないかを確かめます。営業の記録と照らし、既存の取引先や、すでに他社に決めた会社が混ざっていないかも見ます。メールの開封は受信側の環境によって実際と食い違うことがあるため、開封だけを決め手にしないようにします。
施策。 確かめた結果に合わせて、連絡の順番を変えます。たとえば、これまで資料請求の新しい順に電話していたなら、「料金ページを見て、セミナーにも参加した人」を先にし、その中もそれ以外の人も、資料請求の新しい順に電話する順番に変えます。順番の効果を見るために、比べる間は連絡の手段を電話にそろえ、メールとの使い分けは変えません。
確かめる指標。 比べる対象は、資料請求から決まった日数がたち、その時点でまだ商談になっていない見込み顧客です。条件を満たした顧客から順に、無作為に二つのグループに分けます。順番は分けた時点で分かっている情報だけで決めます。片方は新しい順番、もう片方はこれまでの順番で、同じ担当者が、同じ手段・同じ期限・同じ連絡の件数の上限で連絡します。人数がそろわない場合は、連絡の件数の上限を人数の割合に合わせます。
主に見る指標は、グループ全体の商談化率(そのグループで商談になった人数÷そのグループの人数)です。期限までに連絡できなかった顧客も分母に含め、両グループとも同じ期間で数えます。連絡した顧客だけに絞った商談化率は、連絡できた顧客の顔ぶれの違いが混ざるため、参考として見るにとどめます。各グループの人数、連絡した人数、連絡の有無ごとの商談数も一緒に記録し、人数が少なすぎないかを確かめてから、新しい順番に切り替えるかを決めます。
順番の比較が終わったら、資料請求だけの人には導入事例などの情報をメールで届け続けるといった、手段の使い分けを別に試します。一斉に同じ案内を送るのではなく、相手の関心に合わせて情報を届ける順番を考えることが、ナーチャリング(見込み顧客との関係を育てること)の基本です。
小さく始めて改善につなぐ手順:問い合わせ率の低下を例に
ここでは「サイトの問い合わせ率が下がった原因を探し、戻す」という一つのテーマで、最初から最後までの流れを追います。
1. 問いと指標を決める
最初に、何を知り、どの判断を変えたいかを言葉にします。この例では「問い合わせ率が前の期間より下がった原因を探し、戻すための施策を一つ選ぶ」が問いです。指標は問い合わせ率(問い合わせ数÷訪問数)で、比べる期間を先に決めておきます。
この例では、問い合わせ数を「受け付け完了ページが表示された訪問の数」として数えます。送信ボタンを押しただけでは、入力の誤りや通信の失敗で受け付けまで進まないことがあるためです。同じ訪問で完了ページを読み込み直しても1件と数え、社内のテスト送信は社内の接続元を集計から外すか、送った日時を記録して差し引きます。同じ訪問で何件も送る人もいるため、実際に届いた問い合わせの件数とは少しずれることがあります。差が大きいときは、計測の設定や重複を先に調べます。電話番号のクリックは実際に電話がかかったかまで分からないので、問い合わせ数には入れず、別の列で記録します。
2. 計測を確かめ、表を作る
テストで一度問い合わせを送り、Google アナリティクスに受け付け完了ページの表示が記録されることと、問い合わせが実際に届いたことを確かめます。そのうえで、期間中の受け付け完了の数を、実際に届いた問い合わせの件数と照らし合わせておきます。
次に、探索レポートで、受け付け完了ページの表示を含む訪問(セッション)全体を対象にするセグメント(セッション単位の絞り込み)を作り、その訪問の数を問い合わせ数とします。訪問数も同じ期間・同じ訪問の単位で出し、どちらも「その訪問がどこから来て、最初にどのページを開いたか」で流入元と入口ページに割り当てます。片方だけを利用者の単位で数えると、率の分母と分子がずれてしまいます。
この条件で、週ごと・流入元ごと(自然検索、広告、SNS、メールなど)・入口ページごと・端末ごとの訪問数と問い合わせ数を、Excel や Google スプレッドシートの一つの表にまとめます。表の横には、広告の停止や変更、ページの修正、キャンペーン、季節の行事など、期間中の出来事のメモを付けます。問い合わせた人の氏名やメールアドレスは入れず、件数だけを扱います。
3. 指標を計算する
全体の問い合わせ率に加えて、流入元別・入口ページ別・端末別にも同じ式で率を出します。全体の率が下がったときは、流入元ごとの率が下がったのか、率の低い流入元の訪問が増えたのかで打ち手が変わります。前後の期間で、流入元ごとの訪問数・全体に占める割合・問い合わせ率を並べ、どちらの変化が目立つかを見ます。
比べる相手は直前の期間です。季節の違いを考える材料として、前年の同じ時期とも比べます。ただし、年によって流入元の構成や行った施策が違うため、前年との差がそのまま季節の差とは限りません。
4. AIに指示する
表とメモを ChatGPT や Claude に渡し、次のように頼みます。
「添付の表は、週ごと・流入元ごと・入口ページごと・端末ごとの訪問数と問い合わせ数です。問い合わせ数は受け付け完了ページを表示した訪問の数(同じ訪問の読み込み直しは1件、社内のテスト送信は除外済み)で、問い合わせ率は問い合わせ数÷訪問数です。前の期間と比べて問い合わせ率が下がった流入元とページを、下がり幅と訪問数の大きい順に表にしてください。流入元ごとの訪問の割合の変化も並べてください。下がった理由の仮説を挙げ、それぞれを確かめるために見るべきデータも添えてください。訪問がない期間の率は推定で埋めないでください。出来事メモの期間と重なる変化には印を付けてください」
最初から施策を決めさせず、傾向の整理と仮説の候補出しにとどめると、結果を確かめやすくなります。
5. 元データと照らし合わせる
AIが出した率を、表計算で計算し直した値と比べます。合計が Google アナリティクスの画面の数字と合うか、期間中に計測の設定やフォームの変更で数え方が変わっていないかも確かめます。そのうえで、AIが挙げたページを実際に開き、端末を変えて表示や入力のしやすさを確かめます。
6. 施策を選んで実行する
仮説ごとに、影響の大きさ(下がった流入元やページの訪問数が多いか)、原因の確からしさ(元データと実際のページで裏付けが取れたか)、実行の手間を比べ、一つに絞ります。たとえば「スマートフォンからの訪問で率が下がっていて、フォームの変更の記録を見ると、率が下がり始めた時期に入力欄を増やしていた」と分かれば、入力項目を減らす施策を選びます。
7. 効果を測り、判断を残す
施策の後も、変更前と同じ期間の区切り、同じ集計条件、同じ式で問い合わせ率を測ります。流入元の構成の変化と、同じ時期に行った別の施策(広告の変更、キャンペーン、記事の公開など)も記録しておきます。できれば、A/Bテストの道具で訪問者を無作為に二つに分け、同じ人にはいつも同じフォームを見せ、同じ期間・同じ集計条件で新しいフォームと元のフォームを比べます。訪問ごとの問い合わせ率に加えて、分けた人のうち問い合わせた人の割合も見ます。こうすると、施策そのものの効果を見分けやすくなります。
選んだ仮説、変更内容、判断理由、結果を残しておくと、担当者が替わっても振り返れます。期待した変化が見られなかった場合は、仮説、対象期間、施策の届き方を見直し、次に集めたい情報を整理しましょう。
利用時に押さえたい注意点
データの偏りと欠損を確認する。 特定の期間や顧客に偏った情報からは、全体を捉えにくい場合があります。取得方法、欠損、比較期間を確認し、どの範囲のデータから出た結果かを明確にします。
事実と推測を分ける。 AIが示した相関だけで原因を決めることはできません。期間差やキャンペーンの影響を確認し、元資料や顧客の声に戻って、事実と仮説を分けて扱います。
判断の理由が見えにくい時は、別の道で確かめる。 予測に使うAIや生成AIは、なぜその結論になったのかが見えにくいことがあります。元データを手で集計し直したり、前年との単純な比較や別の切り口の集計と比べたりして、食い違いがないかを確かめます。そのうえで、採用するかどうかは最後に人が決めます。
入力するデータの扱いをサービスごとに確かめる。 顧客情報や社内資料を入力する前に、使うサービスごとに「入力した内容が保存されるか」「AIの学習に使われるか」「社内外の誰が見られるか」を確かめます。同じサービスでも契約の種類や設定で扱いが変わることがあります。社内の情報管理ルールと照らし、誰が何を入力し、誰が結果を確認して使うかも決めておきましょう。
公開する内容を確認する。 AIが作った広告や記事の文章・画像を使う場合は、内容の根拠に加え、権利や利用条件にも目を通します。顧客に伝える内容として適切かどうかも担当者が判断します。
よくある質問
分析の経験が少なくても使えますか?
目的と指標を絞れば、既存の集計を整理し、次に確認する点を考えるところから始められます。たとえば対象ページを選び、閲覧数と問い合わせの状況を並べてみましょう。結果をそのまま採用せず、数字の意味を確認しながら進めます。
生成AIと予測に使うAIは同じですか?
生成AIは文章や画像などを作る用途に使えます。予測モデルは過去のデータから傾向を学び、将来の数値などを推定します。文章の整理と需要の見通しなど、目的に応じて使い分けたり、組み合わせたりします。
データが少ない場合はどうすればよいですか?
少ないデータを細かく分けると、偶然の影響を受けやすくなります。まずは問い合わせ内容や既存顧客の声を整理し、判断に必要な情報が何かを確認します。そのうえで、同じ条件で継続してデータを集める方法を考えましょう。
分析結果は誰が判断すべきですか?
AIが情報の整理や候補出しを支援し、事業の目標や顧客との約束を理解した担当者が採用と実行を判断します。分析の前提、実行した施策、判断理由をチームで共有すると、次の改善につなげやすくなります。
【体験談】独学から脱し、体系的に学び直した卒業生
AIを使いこなすには、土台となるマーケティングの理解が欠かせません。独学から体系的な学びへ切り替えた卒業生の体験談を紹介します。
独学SEOライターからキャリアアップした世利さん(女性・ライター)
フリーランスのライターとして活動していた世利さん。専門性を高めてキャリアを広げるため、WEBMARKSを受講しました。独学では断片的だった知識を体系的に整理したことで、SEOの理解が深まり、マーケターとしての視点も広がったといいます。卒業後はBtoB企業のプロジェクトで、サイト改善の提案や分析資料の作成など、より上流の業務に関わるようになりました。
独学では見えなかったSEOの深さを実感した新井場さん(男性・副業)
会社員として働きながら、副業でWebコーディングやShopify構築に携わっていた新井場さん。独学でSEOの案件も受けていましたが、「自分のやり方が本当に正しいのか分からない」という不安からWEBMARKSを受講しました。体系的に学んだことで、それまでの理解がSEOの一部に過ぎなかったと気づき、より深い視点でマーケティングを捉えられるようになったといいます。現在はエンジニアとマーケターの視点を武器に、継続的な案件の獲得に向けて活動を広げています。
\未経験から月40万のフリーランスに/
まとめ
AIマーケティング分析は、検索、広告、販売、顧客の声などのデータを整理し、改善の判断を支援します。
事例では、商品検索、個別のおすすめ、需要予測と発注、広告の評価、顧客の声の分析など、使う場面がそれぞれ異なります。
まずは問い合わせ率のように改善したい指標を一つ決め、数え方と集計の条件をそろえたうえで、小さく試しましょう。
この記事を書いた人
Y.Sugaya
大手化粧品メーカー、ベンチャー2社を経験後、兄妹経営で採用支援を行う。個人では日本最古のデニムブランドのPMを務める。得意な仕組みづくりと事業グロースに加え、認知・リード獲得も自ら行い、企業の事業・組織を包括的に成長支援するために、WEBMARKSにてマーケティングスキルを習得中。

鈴木晋介
株式会社WEBMARKS代表/Webマーケター
会社員時代は、毎日上司に怒鳴られ、3〜4時間睡眠。時間と場所に縛られない自由な働き方を求めて、フリーランスWebマーケターとして独立する。独立後数年で月500万円以上の案件を受託。海外国内問わず旅行が大好き。自分の趣味を全力で楽しみながら仕事をしている。
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